「……」
ソファーの上でうとうとしていたら、つい眠り込んでしまったらしい。
むくりと怠惰に起き上がった俺は、冷蔵庫からビールを一本拝借して、気つけとばかりに一気に飲み干していく。
仕事でもして気を紛らわせようとテーブルの上に自分のノートパソコンを開いたが、瞼は先程よりも確実に重くなっていた。
キーボードを叩く指を止め目頭を押さえながら頭を左右に振ったが、眠気が飛んでいく気配はない。
次第に頭がかくんと揺れ始めるから、俺はついに起きていることを放棄してしまった。
エリカの匂いに満たされたこの場所で、俺はずっと昔の夢を見ていた。
恥ずかしそうに、俺の名前を呼ぶ柔らかそうな唇。
エリカの全てを知り尽くした指が、素直な身体をどんどん高めていく。
抱いているときだけが、唯一、自分のものだと実感出来た。
もう二度と取り戻す事の出来ない、甘くて濃密な時間。
二年経った今でも、決して忘れることは出来なかった。
“…翔太…”
夢の中のエリカが、愛おしそうに俺の名前を呼ぶ。
許されるなら、もう一度触れたい。
指先を絡めながらエリカを引き寄せると、堪らない想いが俺の胸に溢れかえっていた。