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「寧々、ご飯食べたら風呂入るぞ」

「しょうちゃんも?」

「……」

いくらエリカの家に頻繁に出入りしているからと言っても、流石に風呂を借りたことはないし、泊まったことなんてあるわけがない。

一度冗談で泊まっていいか尋ねたら、背筋が凍りつくくらい冷たい瞳を向けられたことがある。

「風呂はまぁ…一日くらいいいか。明日の朝にでもママに入れてもらえ。歯磨きしたら、ベッドに入って寝よう」

「…ママは?」

今まで笑っていた寧々の表情が、どんどん曇っていく。

朝からずっと、エリカの姿を見ていないんだ。

普段はいい子で待っていられるのに、こんなに夜遅くまで帰ってこなければ寂しくて仕方がないのだろう。

「…ふ、ふぇーん、ねね、ママに会いたいの…」

「ちゃんと帰ってくるから。大丈夫だ」

眠気も相まってグズグズと泣きだした寧々を、俺はずっと抱っこしながら宥め続ける。

そのまま三十分以上泣き続けた寧々は、いつの間にか俺の腕の中で泣き疲れて眠ってしまった。

(…やばい、俺まで眠くなってきたな)

寧々をそっとベッドに運び、俺はため息をつきながらネクタイを緩め、リビングのソファーに腰を下ろす。

何とか意識が落ちないように気を張っていたが、今日は色々とあったせいで疲れていたのだろう。

ちょっとだけ休めるために閉じた目を開ける力さえ、俺にはもう残されていなかった。