「なんかあったのか」

「……え?」

「いつもはバカみたいにヘラヘラ笑ってるくせに、今日は作り笑いばっかりしてただろ」

「…ヘラヘラって…もっと言い方…」

俺の言葉に口を尖らせた結城が、オレンジ色のカクテルを口に含ませる。

さっぱりとしていて飲みやすいのか、そのままゴクリと喉を鳴らして飲み干してしまった。

「酒強い?」

「ん~…あんま飲んだことないからわかんない」

「今日は奢るから。飲めよ」

バーテンダーに声をかけて、同じものを頼む。

結城はその言葉に驚いて、疑うような視線を向けていた。

「…今日の橘マネージャー、なんか気持ち悪い」

「あのな。俺はお前を心配して…」

「え?」

つい口が滑ってしまって、慌てて口に親指を充てがう。

結城は大きな瞳を瞬かせながら、俺の様子をじっと覗っていた。

「笑ってんのが…お前唯一の取り柄だろ。しんみりされると調子狂うんだよ」

「なんかバカにされてる気がする」

「違う。俺は褒めてやってんの」

そう言った瞬間、結城の頬が上気したように赤く染まる。

「初めて褒められた…」

嬉しさを噛み締めるように呟いた結城の表情に、俺の目は釘付けになっていた。

「…嬉しい…」