首を傾げながら無邪気に聞いてくるこいつが、本当に、憎らしくてしょうがない。

「特別だったんだよ、お前が。どうでもいい奴のこと、あんなに怒るわけないだろ?」

俺がそう言った瞬間、エリカは目を丸く開いたまま固まってしまった。

「わ、わかったから…ちょっと離れてくれる?」

いまいち本気に取られていないのか、エリカはすぐに近づいた俺の顔からふいっと視線を逸らしてしまう。

まさかここまで言ってもわからないなんて、そんな鈍感な奴じゃないよな?

エリカはもう俺のこと見ようとすらせず、何かを考え込んでいる。

わかってる。…こんなに急に追い詰めても、俺の望む答えは帰ってこない。

だけど俺一人だけが盛り上がってるみたいに思えて、なんだか虚しくなってしまった。

「悪い。お前といると…めちゃくちゃ調子狂う」

俺の心をここまでかき乱せる女なんて、きっと他にはいない。

そんな俺を尻目に、エリカは表情一つ変えることなく、作業を再開してしまっていた。

「何やってんだよ」

「明日からのクリアランスセールの準備に決まってるでしょ!ゆりちゃんいなくなっちゃったから、私ひとりでやんなくちゃいけなくなったの!」

「…お前のその切り替えの早さは、見習わないといけないな」

「えっ?何か言った?」