「もう上がりだよな?この後予定あるか」
「べ、別にない…ですけど…」
「だったら飲みに付き合え」
有無を言わせないように強い視線を送れば、結城は迷いながらも小さく頷く。
ほとんど衝動的な行動だった。
まるで今にも消えてなくなりそうな結城を見ていたら、いてもたってもいられなかった。
酒を飲むつもりでいた俺は、車を近くのコインパーキングに移動して外で結城が来るのを待つ。
店以外の場所で二人きりで会うのは、なかなか新鮮だった。
隣を歩けばいいのに、結城は遠慮がちに俺のすぐ後ろをただひたすら着いてくる。
…手を引き寄せてその細腰に手を回したら、どんな顔をするだろう。
クリスマスムード一色に華やいだ街並みの影響か、俺はそんな馬鹿げたことばかり考えていた。
行きつけのバーに入ったら、連れ立って歩いていた結城の様子が急におかしくなった。
そういえばこいつ、ついこの間まで未成年だったんだ。
居酒屋ならまだしも、こういう場所に来るのは初めてなんだろう。
警戒するように周りをキョロキョロ見渡す結城を見ていたら、口の端が自然と上を向いてしまった。
「お前少し落ち着け」
クスクス笑いながら、俺はカウンターの隣の席に結城を促す。
恐縮しきりの結城を尻目に、俺はわざと強めのカクテルをオーダーしていた。