白鷺さんがエリカの事情を知っていたことにも驚いたが、そんな風に事実を歪曲して捉えているとは思いもしなかった。
「若い子と遊びたいなら…私でいいじゃないですか」
「白鷺さん…」
あまりにもくだらなくて、笑いがこみ上げてきそうになる。
「大体子供がいるのに男と遊ぶような人なんて、最低じゃないですか?」
彼女がエリカを引き合いに出さなければ、俺も穏便に断っていたかもしれない。
でも彼女の口からエリカを卑下する言葉が出た瞬間、俺の頭にはカッと血が上っていた。
「だから、橘マネ…」
「白鷺さん、俺、さっきから離せって言ってるのわからない?」
俺の声が一層低くなった瞬間、白鷺さんの肩がびくりと跳ねる。
顔は笑顔のままで、俺は絡みついた手を思い切り振りほどいていた。
「悪いけど勃たないから」
「……」
俺の口から出た言葉に驚いて、白鷺さんの表情が一瞬にして凍りつく。
「どんなに若くても。可愛くても。…白鷺さんじゃ勃たない」
こんな捨て台詞を十代の子に吐くなんて、エリカに知られたら最低と罵られそうだ。
…だから、何を聞かれても黙っておこう。
固まったまま動かなくなった白鷺さんをその場に放置して、俺は急いで地下の駐車場に向かった。