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「あの…橘マネージャー、この後なんですけど…」

ある日の仕事終わりに、バイトの白鷺ゆりにそう言って呼び止められた。

大分懐かれているなとは思ったが、まぁ俺の見た目に惹かれているのだろう。

バイト歴は一番長くベテランなのに、時々勤務態度にムラがあるところが少しだけ気がかりだった。

「私急いでるので先に帰りますね。お疲れ様でした」

エリカが俺たちにそう告げて、逃げるようにその場を去っていく。

自惚れでなければ、エリカは最近俺のことをようやく意識するようになってきた。

俺が冗談を言っただけで顔を真っ赤にするし、心配して気にかけてやれば、どこか苦しそうな表情を浮かべる。

なにより毎日送り迎えやご飯の手伝いを続けているせいか、今までつんとしていた態度が和らぎ、俺の前でもよく笑顔を見せてくれるようになっていた。

やっと実り始めた努力を、こんなことで台無しにはしたくない。

「結城」

咄嗟に呼び止めたエリカに近づき、事務所の鍵だと偽り、車の鍵を手渡す。

「先に行って待ってろ」

小さな声でそう告げると、エリカは驚いたように目を瞠っていた。

「…お疲れ、様でした」