口では強がっていても、顔にはめちゃくちゃ嬉しさがにじみ出ている。
わかりやすくて、単純で。素直になれば、ものすごく可愛いエリカ。
まぁそんなこと言ったら、確実に殴られるだろうけど。
「…で、どうするんだよ。食うのか食わないのか」
「いただきます。返してください」
観念したエリカが、ようやく俺に向かって頭を下げる。
まだ少し不服そうだけど、そんなことはこの際どうでもいい。
「…美味しい…!橘マネージャーのくせに…なんで美味しいの…」
「なんだよそれ…」
「しょうちゃん、おいしっ」
「いっぱい食えよ」
たとえ料理が出来なくて、掃除や洗濯が得意じゃなくても、全く気にならない。
出来ないことは互いに補って、エリカとこんな風に暮らせるなら、俺は他には何も望まない。
二人の笑顔を見ているだけで、こんなにも満ち足りた気持ちになれるのだから。
「おいエリカ。そろそろ寧々を風呂に…」
洗い物を終えてリビングに向かえば、ソファーの上から細い足が投げ出されていることに気づく。
お腹がいっぱいになって今日の疲れも出たのか、エリカは仰向けの状態で小さな寝息を立てていた。
(俺が男だって、わかってんのかこいつ…)
「ん…」
まっさらな白い胸元が、微かに上下している。
目が釘付けになった俺は、まるでエリカに引き寄せられるように、緩く巻かれた茶色の髪を自分の指に巻きつけていた。