「…遅いな」
地下駐車場に車を取りに行き、待ち合わせの場所に着いてから、もう十分以上が経過している。
寧々を迎えに行った後、どこかに寄り道でもしているのだろうか。
不意に、以前エリカを口説いていた軽い男の顔が浮かんで来る。
まさか、またあいつに捕まってたりしないよな…。
不安になった俺は、急遽ハザードをつけたまま運転席を降りて、職員の玄関の方に向かっていた。
「せっかく誘ってくれたのにごめんね?今日は用事があって…」
通路の曲がり角から聞こえて来るのは、間違いなくエリカのものだ。
やっぱり、嫌な予感は当たる。
前回同様しつこく誘われていると思った俺は、ものすごいスピードで曲がり角から顔を出していた。
「…あ、しょうちゃん!」
「え…?」
いきなり現れた俺のことを、エリカと寧々が驚いたような顔で見上げている。
「…あれ」
一緒にいるのは、あの男じゃない。
エリカと同い年くらいの女性が、俺のことを食い入るように見つめていた。
「…ねぇ、知り合い?」