「結城、今月のシフト、修正終わったら俺にもチェックさせろよ」
早番で上がったあと、猛然と事務所のパソコンに向かっているエリカに後ろから声をかける。
「どーぞ!」
ちょうど作業を終えたところだったらしく、エリカはプリントアウトしたシフト表を俺の胸に押しつけてきた。
「もう帰れるのか?」
「…ここにいても、橘マネージャーの視線が煩わしくて、仕事になりませんので」
エリカが就業時刻以外でも、こうして残って仕事をしていることを俺はよく思っていない。
俺が来る前は、サービス残業や休日出勤が日常的に行われていたのだろう。
最近エリカは俺の目があるところでは、かなり動きにくそうにしている。
こいつの頑張りは、俺が誰より認めている。
でもたとえそれが会社のためにやっていることでも、寧々との時間や、自分の身体のことを気にしてほしい。
「送る。従業員入口で待ってろ」
そう言って頭にポンと手をおけば、エリカは毛の逆だった猫のように、警戒心むき出しで俺を睨みつけてくる。
マネージャーなんて損な役回りだ。
毎日そばにいるだけで、監査でも受けているような態度を取られる。
ただ心配しているだけな俺の気持ちになんて、本人は露ほども気づいていない。