なんでこんな振り向きもしない女を求めるのか。
答えは簡単。認めない程子供でもない。

昨日、バーに行った時、加地さんが俺に言った。

「はっきり伝えないと、あの人絶対気づきませんよ」


食えない男だ。


確かに。はっきり言えばいい。だけど、この一歩置いた関係も嫌いじゃない。


「おまえって冷めてる」

俺は、蒼の薄い瞳を見つめる。



「熱くさせてみたいでしょ?」


軽く答えるこいつはどこまでも飄々としていて掴めない。こんな女、俺の周りにはいない。つか、何人もいても困る。


そうだな、惚れた俺が結局おまえに叶う筈ない。



「別に?」



だから俺も受け流す。大人の会話。ガキっぽい自分に苛つく。



「俺が熱くなったら嫌だし」



正直、おまえを熱くさせようと必死になる俺しか想像できなくて溜め息しかでない。