「…ずるい」
あたしは涙目で啓吾を見上げる。
「なにが」
「そんな素振り全くないじゃない」
「おまえが気付かなねーだけだよ。鈍感女」
啓吾は、あたしの頭を軽く小突く。
気付く訳、ないじゃない。
「…この腹黒男」
あたしは啓吾に掴まれた腕を反対に引っ張って、
その薄い唇を塞いだ。
―――初めて会った時から、感情なんてきっと簡単に奪われていた。
認めなかったのは、あたしが自分で思うよりずっと弱かったからだ。
「…あたしの方が一途だわ」
後ろで、テルが大きくガッツポーズをしていたり、加地さんが苦笑したのは見なかった事にしてあげる。
Fin