いつもより少し遅めに出勤すると、編集部署がなにやらザワザワとしていることに気づいた。
どうしたんだろう?何かあったのかな?
「あ、未歩!」
ツッチーが私に気づき、駆け寄ってくる。
「おはようツッチー。どうかしたの?」
「大変だよ!今、編集長から社長に電話があって、なんかおばあちゃんが今朝急に倒れちゃったらしくって、病院に連れて行かなきゃいけないらしいの!
でも今日は新人小説大賞の沢上遥さんとお会いする日になってて、もう少しで約束の時間だから、どうしようってなってて……」
「えっ!?」
必死になって呂律を回すツッチーの説明に、私は驚く。
見れば、確かに社長は受話器を手にして険しい表情をしている。
きっと今、編集長と話してるんだろう。
「おい、上原」
すると、受話器から耳を話した社長が私の名前を呼んだ。
「あ、はい!」
「ちょっと来い。お前に代われとのことだ」
そうして、少し遠くから私に受話器を差し出す社長。
編集長が、私に……?
私はおそるおそる近づいて、そっと受話器を受け取り、耳に当てた。