そういうことだったのか。


どおりでこんな朝っぱらか連絡してくるワケだ。



「わかった。私も今日、ちょうど仕事が一区切りつくところなんだよね。だから早上がりできるの」



今担当している作家の初稿が届いて、ようやく今日あたり読み終えるところまで到達した。


だから、今日はもともと出勤日じゃなかったが、それだけ読んで早く仕事をあがろうと考えてたんだ。



そんな日に沙奈から連絡がくるなんて、なんてタイムリーなんだろう。



沙奈の実家からだと、私が今いるここからは電車で数時間だ。



『やった!じゃあ、私がそっちに行くねー!未歩が働いてる仕事場を一目見てみたいと思ってたの』



「ただのしがない出版社ですよ」



『嘘ばっかり。超有名な作品ばっか残してる出版社じゃない。本に関して無知な私でも、それくらい知ってるんだからね』



……まあ、否定はしないけれど。



それから私が家を出ないといけなくなる時間まで他愛ない話をして、積もった話は会った時に話そうというこで、電話は切られた。