「実家ってことは、今は日本に帰ってきてるの?」
『うん。ていうか、しばらくは日本にいるつもり。なんかね、イラストレーターとかの仕事もお願いされるようになってさ』
「へえ……!すごいね」
『そうそう。でね、こないだは文庫の表紙の描かせてもらったよ』
「えええ!? 初耳なんだけど!?」
『だって言ってないもん』
あははっと、沙奈の無邪気な笑い声がケータイ越しに聞こえる。
なんということだ。親友にくらい、教えてくれてもいいのに。
沙奈は秘密主義すぎる!
風景画を得意とする沙奈が描いた表紙とか、めっちゃ見てみたいんだけど!
「なんて本?また買いに行くから教えて」
『あ、それなんだけどさ。買わなくていいよ。未歩にその本渡そうと思って。
せっかく帰ってきたから、今日あたり会えないかなって思って連絡したの』