「沢上遥の言葉も、なんとなくあんたの作品と似てる部分があんのよね。
真っ直ぐに私の心の中に入り込んできて、まるでたくさんの人に伝えてくれってお願いされてるみいで……。
伝えていくことで、その想いが、人々により繋がりを持ち、やがて、ただひとり大切な人の元に届くように仕組まれてるみたい」



「……ええっ。それ、考えすぎじゃないですか?」



今回の大賞作品を受賞した作家は、まだ新人だ。


そもそも、そんな高度な思考を持って小説を書く人はそうそういないだろう。



「まあ、そうかもね。ただのあたしの直感よ。純粋に伝えてあげたいなって思うの。それほどまでに切ない物語なのよ」



「その想いが生き続けるように、たくさんの人の手に渡るように、編集長が輝かせてください」



「おう。任せろ」



勢いよくジョッキを持ち、生ビールを飲み干した編集長は、八重歯が見える無邪気な笑顔で頷いた。




その日はやがて、お開きとなった。