そのあとは、沢上遥さんの話になった。



「面白いわよ、あの作品も。思わず私が編集の担当したいですって言っちゃったくらいだもの」



「編集長にそう思わせるってことは、かなりの実力がある方ですね」



「どうだかね。ただ、面白いのよ。こんな考え方をする人間が、この時代にもいるんだなって」



「へぇ……」



かつての私の編集担当者に、これほどの事を言わせる人だ。


沢上遥さんって、どんな人なんだろう。


その作品を読んでみたいな……。



「主人公は過去に傷を抱えた少年なんだけどね。とある少女からたくさんのことを教えてもらったのよ。
この世界が光で溢れていること。生命を愛でることの大切さ。そして、ずっと見出せずにいた生きる理由までも」




「…………」



なんとなくだけど、私が担当してみたい……と、思ってしまった。


読んでみたいと、思ったのだ。




「〝君の心の中に、僕はまだいますか?〟」



「……え?」



「〝君との絆は消えないと、今でも信じています〟」



編集長が、ポツリとつぶやいた言葉に、胸が跳ねる。


編集長の言葉じゃない、他の誰かの言葉が、今ここで代弁されて、私に届いたように感じた。