「そんなこと言ってるから、編集長はろくに恋愛できずに三十路を越えちゃったんですよー!」



あ、ツッチー!


その言葉は編集長には禁忌……っ!




「…………な、ん、だ、と?」



にこやかに笑いながら、編集長はその場で腕を組み佇んでいた。


いや、しかし目が笑ってない。オーラというものがヤバイ。



「もう一度言ってみろ、土屋」



語尾にハートが付きそうな程、わざと可愛らしい声で話しているが、ツッチーという愛称が土屋に変更されてる時点でアウトだ。



年のことに関しては、編集長に触れてはいけない。



それはこの出版社で暗黙の了解であったが、素直な心を持つツッチーは、つい気持ちを表出してしまったんだ。



ツッチーを見れば、顔を青くしている。果てしない後悔をしていることだろう。



「ご、ごめんなさ……」



「あとで覚えてろ」



般若のような顔つきになった編集長を止める術はなく、ツッチーはのちになんらかのペナルティーを受けることになるだろうことは、言うまででもない。