そのために小説を書いて受賞したという功績を糧に、学校に行きながらもこの出版社でアルバイトを始めた。



そして、時間はかかったけれど、ここの社員になれた。



編集者としてはまだまだ新米だし、いっぱい学ばせてもらってることばかりだけど、ようやく人並みにはできるようになったと思っている。




「そうだ上原。今日は暇?仕事終わったら久々に飲みに行かないか?」



編集長、直々のお誘い。


酒豪な彼女は、機嫌がいいときはよく飲みに誘ってくれる。


憧れである人にこうやって言ってもらえるのは、とても嬉しいことだ。



「はい!喜んで」



大きく頷けば、すぐさま不満の声があがった。



「は!?未歩、さっき私の誘い断ったじゃん!なんで合コンはダメで、編集長と飲みに行くのはいいのー!?」



「なんだツッチー。未だにそんなこと言ってるのか」



編集長は、やれやれと呆れた様子でツッチーを指さし、忠告した。



「いいか?合コンなんてチャラチャラしてないで、ちゃんといい出会いをして、素敵な恋をして、運命の男を見つけんのよ?」



こんな男勝りな性格の編集長でも、意外と運命なんかを信じちゃうお茶目な一面があることは、わかってもらえたことだろう。