「編集長、今年は誰に決まったんですか?」


さっきまで私に合コンを誘いまくってきた同期も、今はそのことが気になったんだろう。編集長に単刀直入に聞いている。


早く私も知りたい。



「作品の題名はまだ検討していくつもりだけど、今回の受賞作家は、沢上遥(さわかみ はるか)さん。あなた達と同年代の人よ」



沢上遥。 女の人か……。



「編集長が担当されるんですか?」



「ええ。かつてあんたを活躍させたように、今度も絶対、大傑作の作品にしてみせるわ」



「楽しみにしてます」



それは、素直な気持ちだった。



なぜならこの人は、とても見る目がある。


天性の鋭い洞察力と豊かな感性を持っているからこそ、編集のときに行われる担当と作家でのやり取りで、納得できる程の指摘をくれる。



この人が私の小説を、より良く、読みやすく、感動を与えれるように編集作業を一緒にした中で思ったんだ。



小説を書くうえで、ひとつの物語を形作る為に必要な編集作業……。


原稿に新たな息吹を吹き込む、編集者になりたいと……。



純粋に、私は編集長に憧れて、小説家ではなく編集者になった。