「航は陸上。沙奈は絵。そして、未歩は小説。みんなそれぞれ今目の前にあることを頑張ってる。俺のせいでその時間を邪魔したくない」
ねぇ彼方。
なんでそんな、泣きそうな顔してるの?
「そうだ。俺、未歩の小説読んでみたいな。完成したら見せてよ」
「……彼方」
目の前にいる、彼の名前を呼んだ。
私、君のそばにいるって決めたから。
彼方が私を守ってくれたみたいに、今度は私が、彼方を支える番で、彼方その優しい願いも叶えてみせる。
「私、小説書くよ」
顔をあげて、彼方を見つめる。
「毎日ここに来て、彼方のそばにいながら小説を書く。それじゃダメ?」
私の言葉に、彼方は驚いたように目を大きく見開いた。