私の行動に、彼方はビクッとして顔をあげる。
突然、手を握られたことに驚いてるようだった。
まるで人に触れることに、慣れてないみたい。
彼方の手は、陸上部にしては白い方で、キレイで大きな手。
ちゃんとぬくもりがあって、生きてるんだと実感する。
涙が溢れそうだった。
私、彼方が死んでたらって思うと、まだすごく怖い。
だけどもう今はね。
生きてるから、前を向いて言える。
「私が絶対、彼方のそばにいる」
まっすぐに、彼方の目を見つめてそう言った。
夕日が少しずつ傾いていく。
彼方の顔が、はっきりと見えてきた。
そのキレイな瞳がユラユラと揺れて、私をただ見つめてる。呆然と。
よかった。
彼方は消えなかった。
もう手放さない。
私は絶対、彼方をなくしたりしない。