すると彼方は、ふぅっと一息ため息をついた。


私がうるさいから、呆れたのかな。




「なんか、慣れないんだよ。そうやって優しくされるの」



「えっ?」



意外な言葉に、顔をあげる。



「逆に聞くけど、なんで未歩達は俺なんかのためにそこまでするの?」





〝俺のことなんて心配しなくていいんだよ〟



前に彼方が言ってた言葉を思い出した。



目を伏せてるその顔は、そのときと同じで、まるで自分にはそんな価値ない……とでも言ってるよう。



まただ。


なぜか、胸の奥が疼く。




「どうして、そんなこと言うの?」




そんなことないよ。



私達にとって、彼方は大切な存在だよ。



彼方がそんなこと言ったら、航も沙奈も、さみしがるじゃん。



もちろん、私だって、すごくすごくさみしい。



今目の前にいる彼方が、窓の外の夕日に照らされてとてもキレイに見えた。



だけど、今にも消えてしまいそうで儚い。




あの事故のときのように、彼方がいなくなってしまいそうで、怖い。



いなくならないで。



そんな願いを込めて、私は咄嗟に彼方の手を握った。