……意味がわからない。
どうしてそんなこと言うの?彼方。
「別に彼方が理由で陸上をサボるつもりはないし、毎日練習には行く。
だけどなんかさ、結構さみしいんだよ。彼方にとって俺ってその程度の存在なのかなって……」
ふっと笑いながら、悔しそうに目を伏せる航に、胸が苦しくなった。
「俺って、彼方に必要とされてねーのかな……?ははっ、こんなこと言う俺、ダサ」
そんなことない……。
そんなことないよ、航。
「違うと思う」
口が勝手に、そう言っていた。
「彼方は航のこと大好きだよ。だってほんとに嫌いなら、あのとき航のことかばったりしない……」
今でも鮮明に思い出せる、あの悪夢のような事故。
あれは決して、航のせいじゃない。
私のせいだ。ちゃんとそのことを、彼方も知ってる。
だから彼方は、私を嫌うことがあっても、航のことを嫌いになったりなんかしない。
彼は誰よりも、優しい人間だから。