日を重ねるごとに、どこかで錯覚してしまう。

もしかしたらこのまま、ずっと二人でこんな時間を過ごしていけるんじゃないか。

省吾にさえ見つからなければ、こんな関係も、許されるんじゃないか。



でもオレたちの繋がりの先には、やっぱり省吾の存在があって。



「あ。省吾がね、圭吾くんも三年になるんだから、もっとちゃんと授業にも出るようにしないとダメだって言ってたよ」

「……っ」



あいつの名前を野崎の口から聞くほど、苦しいことはなかった。



「えっ、圭吾くん?」



かばんを担いで足早に音楽室を出ようとすれば、後ろから学生服を引かれる感覚が伝わってくる。



弱々しいけど、力がこもっていて。

無理に引こうとするけど、絶対離さない。



「ごめん…。省吾と、仲良くないんだよね。話さないほうが、良かったよね」