それから、放課後の音楽室に野崎が来ることはなくなった。

これで良かったんだと、苦し紛れに何度も自分に言い聞かせた。



自由に一人で弾いていれば、
それで満足だろ?

どうせ誰のために弾いてるわけでもなかったんだから、今までどおりでいいじゃないか。



でも、心のどこかで新しいメロディが膨らみ始めていて。

聞かせたい相手がいるんだろうって思いつつも、変なブレーキが感覚を邪魔したんだ。



出そうで出ない、それはまるで、伝えられない言葉と同じみたいに……




「…くそっ」



もやもやして…

今までより全然苦しくて。



どうすればいいんだよ。

このままじゃ、どんどんオレが壊れそうになる。



意味のない期待が、音を狂わせて。

自分の感情どおりに、動けなくなる。



消したくて

でも消せなくて。



消えろ

全部消えてなくなれ



オレの中の余計な想いも

こんなことなら
出逢った頃からの、キオクも全部…