春爛漫な言葉がよく似合う、草原。
花畑。
君は風に舞う花びらの中、くるくると回っていたね。
「あたし、花好きなのよ」
本当はお花屋さんになりたかったの、なんて、可愛い事を言ったりして。
愛情を持って育てれば裏切らないもの。
それが花なの、と。
そういえば君の部屋の窓辺には、いつも綺麗な花が咲いていたね。
季節を彩る色とりどりの花は、淡いものから極彩色まで。
君はどれも、愛おしそうに育てては見つめていた。
「だからあたし、花の中で死にたいわ」
――あぁ、その希望はきっと叶う。
「分かった」
無機質なコンクリートの街中で、彼女は赤の極彩色の中にいた。
それこそ花開く様に。
君はやはり、とても美しかった。
「ベランダから身を滑らせるなんて……運が無いね」
「あら……運なんて関係ないでしょう?死ぬ時間は決まってるって……あなた言ったじゃない」
君は今までと同じ柔らかな顔で微笑んだ。
「そうだね……時間ぴったりだ」
僕の担当はこれで終わる。
監視の対象だった君は、希望通り自らが花と化していた。
「……例えが上手いのは評価するけど、死神さん?私は本当の花の中で死にたいわ」
それも、分かったと僕は言った筈だ。
「――――」
ひらり
ひらり
舞い降りる花びらは君にしか見えないだろう。
それでも満足してくれるかな。
君と過ごした一年間。
君が僕に見せてくれた花達の見送りを。
沢山の花
雪の様な花片を。
「――……」
君はもう語らない。
微笑まない。
けれどこの花達と同じ様に
美しさはそのままだ。
お望みの花葬を
君に
―花―