皆さんは小豆洗いを知っているだろうか。


あれは小豆を洗う妖怪だ。


では、「風呂洗い」は……






『風呂洗い』








「さーて洗濯……」


脱衣所にある洗濯機に服と洗剤を投入。

おっきなバケツでお風呂の残り湯を入れて、洗濯開始。

いつも思うけど地味ながら豪快な作業だと思う。


「よしっ、この間にお風呂洗ってー……」


調子良く回っている洗濯機に背を向けて、私は風呂場と向かい合った。


そう。

いつもと変わらない行動だった筈なのに。



「……」


それ、は、そこに居た。


「な…に」

さっきまで平穏だった湯舟の中に、それはなんの予告も無く存在していた。


腐った花の様な異臭がする。


それ、は。

人の大きさの蛇の様な。

顔を分裂させる程の裂かれた口。

ぬめりのある光沢した皮膚。

頭髪は乱れ、ぱっくりと割れた腹からは収納されるべきモノがただ流れ、両目はずさんに落ち窪んでいた。

「……ッ」


目がそらせなかった。


競り上がる吐き気。


「バケモノ……」




そして私の意識は切れた。