「すみません、お待たせして」


会計を済ませてきた彼は、足早に私の傍へとやってきた。さすがに会計に付いていく事はせずに、離れた場所で待っていた。


そんな事を言ったらさ、

「お互い様だよ。さっきは私の買い物に付き合ってもらったし」


「いや、あれはあれで楽しかったですよ。麻里さんはこういうもの好きなんだとか、知るきっかけになりましたから」


またさらりと彼は言う。私の事を知りたいって思ってくれていると捉えてもきっといいんだろうな。こういう事を言えるってすごいなと思う。私は、言えないから。


けれど、今なら言ってもいい雰囲気な気がする。彼に便乗してしまおう。


「私も新鮮で楽しかったよ。仕事に向き合う姿が見え隠れしてて……」


「今更ですけど、恥ずかしくなってきました。普段と違わない気がするんですけどね」


荷物を持っていない左手で頭をガシガシと力強く掻いている。整えている髪が乱れるのを、あーあと思いながら眺めていた。


照れ隠しなのか彼は私の少し前を歩いていく。けれど、決して置いていかれる事はなくて、私の歩くスピードに合わせてくれているんだと分かる。――なんか可愛い。声を出して笑いそうになったのを、必死に我慢した。


彼の背中を見ながら、静かに半歩後ろを歩くことにした。


予定していたデートプランももう終盤。もっと彼と一緒に居たいのにな。