「久しぶりの映画だったけど、当たりだったね。面白かった」


「でも、意外でした、麻里さんがアクションものの洋画が好きなんて」


俺たちが観たのは、公開されたばかりのアクションが売りの映画だった。俺は気になっていていたけれど、麻里さんは観ないだろうなと思っていた。だって、女性はあまり好まないイメージがある。実際、今まで俺の周りにいた女性がそうだった。


「……そう?映画館で観るならアクションものかなって思うけど。ヒューマンドラマ系は家でゆっくりと観たい派かな」


にっこりと笑いながら、隣に歩く俺を見上げる麻里さん。今日は会ったときから、終始笑顔を絶やさずにいてくれている気がする。


つられる様に、俺もずっと笑っていられる。心から、楽しい時間だなって感じた。


付き合う前も、買い物に連れて行ったりと一緒に並んで歩いたことはあるけれど、恋人になった今とは明らかに距離感が違った。


今は自然と寄り添うように歩いている。




「あっ、あそこの店入っていい?」


……え?心臓が大きく跳ねた。行きたい店を見つけたのか、左側にいた麻里さんは俺の腕に、自分の腕を絡めながら、左手で少し遠くの店を指差している。


「いいですよ」


ドキドキとうるさい俺の心臓に、静まれ、静まれと心の中で言い聞かせた。何も意識していないだろう麻里さんに対して、俺ばかりが動揺しているのがちょっとだけ悔しい。だから、この動揺は絶対に彼女には知られたくない。


こんな事で嫌ったり、馬鹿にしたりする彼女じゃないと頭で分かってはいるものの、嫌なのだ。なぜかと聞かれても困る。兎に角嫌なのだ。