――ピンポーン


宣言通りの時間に玄関のチャイムが鳴る。拓斗君だろうと予想がついた。


「はーい」


すぐに動けるように早めに準備をしていたから、急いで玄関へと向かった。松葉杖だから、さほどスピードはでないけれど。


玄関を開けると、思っていた通り拓斗君がそこには立っていた。


「おまたせ」


「いえ、もう大丈夫でした?」


「うん、昨日の拓斗君の言いつけ守ったら少し楽になったかな。ごめんね、休みの日にまで付き合ってくれて」


「予定のない暇な連休だったので、何も気にしないで下さい」


休日の昼間から付き合わされているというのに、彼は嫌な顔1つせずに付き合ってくれた。さりげなく玄関の扉を開けてくれているし、紳士だなって改めて感じる。







外へ出て、少し歩き始めたところで、後ろから聞こえていた足音がピタリと止まった。あれ?と思い振り向くと、彼は立ち止まり、なぜか私の足元を見ている。


「……」


どうしたんだろうと、首を傾げて彼のことを見つめた。


「……良かった、昨日より少し良いみたいですね」


そう言ってニッコリと笑いながら足元から視線を徐々に上に移動させる彼と目が合った。どうしようか、目のやり場に困る。


「分かるの?」


特にどこがどう変わったとか言っていないのに、分かるものなのだろうか。それとも、ただ適当に発言しているんだろうか。純粋に疑問を抱いて彼に問いかけると、少し誇らしげに彼は笑う。


「分かりますよ、そこはプロですから。歩き方見れば、どこが痛いかとか痛みの変化とか何となく予想がつくんですよ」


「そんなものなの?」


「そういうもんなんです。さっ、そろそろ行きましょう」


分かったようで分からない答え。私なんかとは違う視点で何かを見て判断しているんだろう。


なんとなく納得していると、拓斗君は停まっていた足を一歩づつ前にだし、徐々にスピードを上げて歩き始めて、私の事を追い越して行った。


誘われるように、ゆっくりと私でも着いていける速さで歩いてくれる彼の背中を追いかけることにした。