「この席ってさ、考慮してくれたんだよな?」
「俺も思った」
2人の会話にハッとして周りを見回すと、ここは端の席だからか隣に一組居るだけで、ぐるりと女性客から囲まれることはなかった。
確かに、俺達からすると凄く助かるけど、そんなことまで考えてくれる人が居るんだろうかと、疑問に思った。
「……おい、大山」
「……!!何だよ」
「さっきから黙ってるけど、どうかしたのか?」
店に入ってから一言も発していない俺に対して、同僚の1人香坂が不思議そうに尋ねてくる。
どうしたというか……一目惚れ?いや、そんなバカ正直には言うつもりはないけどな。
「なんでもないよ。……なんだよその顔は」
顔に出すな、顔に出すなと、平常心を意識して答えると、香坂の隣に座っていた池田がニヤニヤと何か言いそうにこちらを見ていた。
「お前好みっぽかったもんな?」
「えっ、何、何。今の店員さんのこと?」
香坂も何の話か分かったらしく、正面の2人がニヤニヤと笑っている。……なんか、ムカつく。
「うるせーよ」
出来る事なら、こいつらには知られたくなかった。けれど隠しようもなくバレてしまっているため、こんな事しか言えない。