自分が変わろうと決意してから数日、予定通りまずは自炊から始めた。もともと料理は好きだけど、1人だと買ったほうが早いし、なにより面倒だと思ってほとんどしてこなかった。作るのは専ら休日くらいだったから、それを変えた。
夜は帰りが遅いから本当に簡単な物だったり、朝から多めに作っておいてそれを食べるようになった。中でも重宝しているのはスープ類。野菜をたっぷり入れてあげると意外とボリュームもあるし、栄養素的には適当に買ったお惣菜よりも抜群にいい気がしている。
この変化が、他にもいい変化をくれた。自分でいうのもなんだけど、肌が綺麗になった。いままでとは明らかに化粧のりが違う。生活時間帯が変わったわけではないし、化粧品を変えたわけでもない。変わったのは少し前を向いた気持ちと、食生活くらい。食事は身体を内面から作っていくものだし、きっと食べる野菜の量と頻度が変わったからだと思う。
1週間も経たないというのにこれだけの変化があるなんて。期待していたものと違う分、嬉しさはより大きくなる。これなら続けられそう。
うまく事が進んでいるようにみえるけれど、1つ気がかりな事がある。今週に入ってからは拓斗君に1度も会えていない。私が仕事帰りに買い物に行ったり、仕事にも今までより時間に余裕をもつようになって、少しだけ生活時間が変わったからだと思う。
会えていないことは少し残念に思う。けれど、少しだけ。もっと綺麗になってから、自分に自信がついてから彼に会いたいなって思うようになった。
出会いがないことに焦りさえ感じていた自分が、こんなにも心に余裕が出来るなんて考えてもいなかった。
明日は仕事が休みだから、今日は帰って何か作ろう。……そんな風に、仕事に集中していないのがいけなかった。
――ドンっ!!!
厨房に鈍い音が響いた。あーあ、やってしまった。他人事のようにそんな事を思った。
「……瀧本さん!?大丈夫ですか」
大丈夫かと声を掛けてくれたのは、たまたま近くに居た中田さん。その中田さんは私より不安そうな顔をして、床に座り込んだ私を見下ろしている。
濡れていた床で滑ってしまい、転んでしまった。注意を払えなかった理由がなんとも情けなくて動けずにいた私を彼女は心配してくれているようだった。
「ごめんなさいね、大丈夫だから……痛っ……」
心配させまいと急いで立ち上がろうとするも、左足に力を入れた瞬間に刺すような痛みが走った。
「大丈夫じゃないみたいですね。立てますか?」
「ちょっと待って、片足ならいけそうだから」
右足に力を入れて立ち上がると、今度は何とか立ち上がることが出来た。さっきの痛みを身体が覚えているせいか、恐くて左足はほぼ浮かせた状態だけど。
「……店長、すみません。あとよろしくお願いします」
ディナータイムに合わせて出勤してきた店長に頭を下げた。左足の痛みが思ったよりもひどくて、この後働けそうになかったから。今ならまだ病院も開いている時間だからと、ちょうど仕事を終えたバイト君が病院へと送ってくれると言う。帰りはタクシーででもいいからと、甘える事にした。
「……ごめんね、よろしく」
「気にしないで下さい。行きましょうか、瀧本さん」
歩けるかと聞かれ、小さく頷くと左足はほとんど地面に触れないように片足で跳ぶように移動した。送ってもらうのに、これ以上彼に負担はかけたくない。
夜は帰りが遅いから本当に簡単な物だったり、朝から多めに作っておいてそれを食べるようになった。中でも重宝しているのはスープ類。野菜をたっぷり入れてあげると意外とボリュームもあるし、栄養素的には適当に買ったお惣菜よりも抜群にいい気がしている。
この変化が、他にもいい変化をくれた。自分でいうのもなんだけど、肌が綺麗になった。いままでとは明らかに化粧のりが違う。生活時間帯が変わったわけではないし、化粧品を変えたわけでもない。変わったのは少し前を向いた気持ちと、食生活くらい。食事は身体を内面から作っていくものだし、きっと食べる野菜の量と頻度が変わったからだと思う。
1週間も経たないというのにこれだけの変化があるなんて。期待していたものと違う分、嬉しさはより大きくなる。これなら続けられそう。
うまく事が進んでいるようにみえるけれど、1つ気がかりな事がある。今週に入ってからは拓斗君に1度も会えていない。私が仕事帰りに買い物に行ったり、仕事にも今までより時間に余裕をもつようになって、少しだけ生活時間が変わったからだと思う。
会えていないことは少し残念に思う。けれど、少しだけ。もっと綺麗になってから、自分に自信がついてから彼に会いたいなって思うようになった。
出会いがないことに焦りさえ感じていた自分が、こんなにも心に余裕が出来るなんて考えてもいなかった。
明日は仕事が休みだから、今日は帰って何か作ろう。……そんな風に、仕事に集中していないのがいけなかった。
――ドンっ!!!
厨房に鈍い音が響いた。あーあ、やってしまった。他人事のようにそんな事を思った。
「……瀧本さん!?大丈夫ですか」
大丈夫かと声を掛けてくれたのは、たまたま近くに居た中田さん。その中田さんは私より不安そうな顔をして、床に座り込んだ私を見下ろしている。
濡れていた床で滑ってしまい、転んでしまった。注意を払えなかった理由がなんとも情けなくて動けずにいた私を彼女は心配してくれているようだった。
「ごめんなさいね、大丈夫だから……痛っ……」
心配させまいと急いで立ち上がろうとするも、左足に力を入れた瞬間に刺すような痛みが走った。
「大丈夫じゃないみたいですね。立てますか?」
「ちょっと待って、片足ならいけそうだから」
右足に力を入れて立ち上がると、今度は何とか立ち上がることが出来た。さっきの痛みを身体が覚えているせいか、恐くて左足はほぼ浮かせた状態だけど。
「……店長、すみません。あとよろしくお願いします」
ディナータイムに合わせて出勤してきた店長に頭を下げた。左足の痛みが思ったよりもひどくて、この後働けそうになかったから。今ならまだ病院も開いている時間だからと、ちょうど仕事を終えたバイト君が病院へと送ってくれると言う。帰りはタクシーででもいいからと、甘える事にした。
「……ごめんね、よろしく」
「気にしないで下さい。行きましょうか、瀧本さん」
歩けるかと聞かれ、小さく頷くと左足はほとんど地面に触れないように片足で跳ぶように移動した。送ってもらうのに、これ以上彼に負担はかけたくない。