――
―――
「「……は…ハハハハハ」」
昼前だとは言ってもまだ、午前中。朝からこの人たちは本当にうるさい。そんなに……
「2人して爆笑なんて、俺マジで傷つきました。真剣な話をしたんですよ」
今日俺の家を訪れたのは、部署は違うけど同じ職場の先輩の山下さん、そしてその奥さんになったばかりで俺の直属の後輩にあたる小川の2人。呼びなれてしまっているから、小川の事は未だに旧姓で呼んでいる。
昨日の出来事と、俺の悩みを聞いてもらったら、返ってきた反応は……爆笑のみ。俺の扱いが日を追うごとにひどくなっている気がする。小川にいたっては、涙を流して爆笑している。俺が先輩だって、彼女は忘れてないか?
「先輩って、本当に女々しいっていうか、女の子だったらよかったのに」
「お前って本当にロマンチストだな」
「……」
今は何を言っても俺が傷つくだけ。数年の付き合いの中で充分に学んできたつもりだ。だから、無言を貫いて二人の笑いが収まるのを待つことにした。……せっかく小川のためにデザートまで用意していたのに、出すのは止めようかな。爆笑している2人の目の前には、まだ飲み物しか出していない。
「……悪い、悪い、そんな拗ねるなよ」
「拗ねてませんから」
俺が不機嫌になってきたことを、山下さんは察してくれたらしい。というか、ロマンチストとか女々しいとか山下さんには言われたくないんだけどな。山下さんだって俺と同属の人間じゃないか。小悪魔気味な小川の罠に捕まったようなものじゃないか。小川に散々振り回されて、それでも尻尾振ってるくせに。俺との違いは、この人って人に出会えたか出会えてないか、ただそれだけだ。……たぶん。
「……いいと思いますよ。大山さんらしくて」
「小川はまず笑いながらしゃべるのをやめようか」
にっこりと笑って言ってくれはしたけれど、笑いが収まっていない辺り、説得力が全くない。
「ほら、美沙。そろそろ笑うの我慢して。笑いすぎだから」
何とか笑いは収まったらしい山下さんが、小川を宥めてくれてはいるけれど、小川は変わらず笑っている。
「私だってそろそろ腹筋つらいけど……だって、大山さんここまでとは思わなくて。類は友を呼ぶって本当だね、礼央さんと大山さんの発想が似てて、それが可笑しくて可笑しくて……」
目尻からは涙が頬に伝ってしまっている。というか、爆笑の原因はそこか。また我慢できなくなってしまったのか、隣にいる山下さんの胸に顔を埋めるようにして肩を震わせて笑っている。
「……はぁ」
山下さんはというと、完全に顔が緩んでしまっている。本当、小川の行動に振り回されているよな、この人。2人の仲がいいのは嬉しいけれど、俺の兄貴分の山下さんのこんな表情の緩みきった姿見たくはなかった。それに、そういうのは他所でやってほしい。この人たちは俺の悩みを本当に聞いていたのか?
聞いていて、こんな姿を見せ付けてくるなんて、ただの嫌がらせだ。同期の池田も、香坂も彼女がいて、俺だけ独り身な事をただでさえ気にしているというのに。