なんか、危険を感じた時に目を閉じる人の気持ちがやっと理解できたかもしれないな、私。
目をギュッと閉じると、目の前は暗闇に包まれて青の顔が見えないことを安心してるけど、実際には目の前には青の顔があって着々と近付いているわけで油断なんか出来ない……。
やばいって……ファーストキスなのに!!
こんな、マナー講座なんてふざけた授業でしかも、目の前のふざけた奴に奪われるなんて……冗談じゃないよっ!!
――でも……あれ?
目を閉じてから結構経つのに私の唇に何かが当たる感触は無くて。
でも……目を開けた確認するなんて怖すぎる。
「……ブラボー!!Mr.杜川!!ブラボーよ!!最高にドキドキしたわ!!満点よ!!合格だわ!!」
「……だって、芹那ちゃん」
講師の人の声と青の声が聞こえてきて目をゆっくり開くと顎と頬にはまだ青の手があったけど、鼻と鼻が離れるくらいの距離のとこに青がいてホッとした。
「…………その顔ムカつく」
「俺の勝ち、だね……芹那ちゃん?」
すごく自慢気な顔をしていてすごくムカついた。
こいつ……遊んでる、絶対に。
「……は?ときめいたなんて言ってないけど?」
やっぱ、こいつには負けたくない。
「そんな顔で言われても説得力ないよ、芹那ちゃん」
口の端を上げて微笑む青は私の顔から手を離して私の顔を指さした。
え……何?説得力ないって……。
両手で自分の頬を包み込むと自分の顔が熱いのがわかった。
さ、最悪!!!!
「あぁ、残念……授業もう終わっちゃうね。着替えておいで芹那ちゃん」
ムカつく……何も残念じゃないし!!