「芹那さん、大丈夫ですよ。落ち着いて下さい」





足音が止まって聞こえた声は青じゃなくて腹黒王子だった。





「その頭痛すぐ治りますよ。治るまで私がお姫様抱っこで運んで差し上げますからね?」





「え、や……だっ!?」





頭を抑えていた手を退かして顔をあげたのも虚しくて腹黒王子に抱きかかえられたあとだった。





「寮に帰った方が……」




「八王子会長、芹那返してよ」




「芹那ちゃん痛がってますっ……」




「そーやで、会長!」






「大丈夫ですよ、病気じゃないですから。あなたたちは、芹那さんのことを知らないでしょう?」





ん?
"あなたたちは、芹那さんのこと知らないでしょう?"
腹黒王子の前に立ってそう言う四人にそう言う腹黒王子。
あんたも知らないでしょ!?






「ほら、時間が勿体無いから行きますよ?」





腹黒王子の言葉で呆然としてる私を含めた他の四人たちを放置して優雅に歩き黒服のあとを追う腹黒王子。
この人、本当になんなの!?
あれ?頭痛いのも治まった……?






「ほら、言ったでしょう?すぐ治るって」





「……」





「どうしました?」






「……な、なんでもない」







腹黒王子の肩越しに後ろを見ると桃也、憂、豹、柊花とその数歩後ろに青がいた。
いつも腹黒王子が近付いたらすぐに青が駆け寄ってくるのに……。






「杜川くんが心配ですか?放っておけば平気ですよ。

……貴女があれの心配するのは本当に……ムカつきます」





「……え?最後なんて?」





「なんでもないですよ」





本当になんだろうこの人。
けど、青が元気なさそうなのは腹黒王子と話した後。
絶対、この人なんかいったんだろうな……。
この二人、本当に何かある気がする。