数分後。

咲は涙を流しながらあたしの
所へと戻ってきた。

そこにはほっとしながらも
「元気だしなよ」と心ない
言葉をかけているあたしがいた。

次の日。

音楽の授業中、今日は
ヘッドホンでいろんな曲を
聞くという内容だった。

席替えをしてたまたま
あたしと新井くんは後ろの
人目につかずカーテンが
風になびく席になった。

「また隣だね。」

顔を見合せて笑いあううちに
ふと咲を思い出した。

辺りを見渡すと咲は
一番前の席で友達と
話をしていた。

ヘッドホンから流れるのは
眠気を誘うような曲ばかり。

あたしは耳からそれを外し
教室を観察してみた。

先生は前を向いていて
みんなはひたすら教科書と
にらめっこをしていて
誰もあたしに気付いて
いなかった。

だけど、新井くんは意外に
あたしみたいにヘッドホンを
外して窓の外を眺めていた。