ぎりぎりの理性の中で、
真司と呼べばキスやめちゃ
うんだとか呼ばなきゃ二人
を待たせてしまうとか。

「真司、大好き。ずっと…
隣にいるからね?」

やっと止まった。二人の息
が重なるほど近い距離で、
見つめあった。後一秒。
長ければもう止まらない気
がする。

「あっ!麻…」

思わず大きな声を出しかけ
たのは亮平だった。言葉が
途切れた理由は先生と麻美
が一緒だったから。

「最後にもう一回言ってよ」

先生が‘何か’麻美に要求
している。意味がわからな
いままじっと二人を覗いて
いた。

「真司、大好きだよ」

自分の耳を疑った。もうそ
んなに進んでいたなんて。

「もう…止まらなくなっちゃ
うよ?」

頭が真っ白になった。
だって自分のずっと好きだ
った人が他の人とキスをし
ているんだから。

静かな廊下に響く音と声も
出せずに泣いてる音とグラ
ンドの片隅で悲しんでる音

複雑に絡み合う気持ちが音
で表わされていた。