「…………え」


「これで、最後にするから、……お願い」




私が祈るように言うと、英知くんは覚悟を決めたように私に近づいた。


ゆっくりと目を閉じる。





…ちゅっ








遠慮がちに触れられた温もりは、唇ではなく、おでこに当てられた。







「……なんで」


「……唇は、自分のことを想ってくれるヤツのためにとっておいた方がいいと思うから」






そう、ぽつりと言った。


英知くんなりの、優しさなんだね。





「さて……、帰ろっかな」


何事もなかったかのように、立ち上がる私。



今日は、枕濡らすくらいまた泣くだろうな。


電話して、あかねに聞いてもらおう。




そう思いながら。