確かに掃除は面倒だけど、私のため息の理由はもっと違うこと。
「……木野くんは、好きな人とかいないの?」
なんだか、私ばかり悩んでて悔しいから、答えづらいであろう質問を投げかけてみた。
横目で木野くんを見ると、先ほどよりも驚いたように私を見る。
「なんでそんな事、聞くんだ?」
「……別に、ただの暇つぶしー」
「お前はいるの?」
質問したのに、質問で返された。
「……木野くんには、教えないよーだ」
「……何を、教えないの?」
そう透き通るような声が聞こえる。
見ると、あかねが不思議そうな顔をして立っていた。
あかねは今週当番ではないけど、私が終わるまで待っててくれてるみたい。
「あ、あかねー、別に大したことじゃないよー。あ、私あっちの方も掃いてくるね!」
「あっ、穂乃佳……」
私は木野くんとあかねを2人にさせてあげようと思い、教室から離れて廊下に出た。