「ちーなみちゃんっ」



抱きっ



「っわぁ」



腰の下に腕を巻き、あたしにくっついてきたのは、



あたしの彼氏…



楓である。








「っもうー!!驚かさないでよっ、心臓止まるかと思った!楓の馬鹿!!」



…しゅん。



子犬が耳を垂れ下げているかのように、



楓の頭も深く垂れ下がる。



「ごめん、千波ちゃん…」






っわわ!



楓が落ち込んだぁ…



しっぽが下がった子犬のように見えるのはあたしだけだろうか…。



こうもどんよりと落ち込まれると



いたたまれない。



楓は子犬みたいに可愛くて無邪気な男の子だから



こんな姿はみたくないのだ。



「……ごめん、あたしも強く言いすぎたっ!」






「ううん、僕が悪いんだよ…今度からきをつける」



そう言って彼は優しく、あたしを抱きしめた。



きゅーーーんっ//



もう、ほんとこーゆうとこあるから



あーゆう行動とか憎めないし



何より…可愛い…。



女子より可愛い男の子、見たことない…。






ぎゅうっ



時間とか関係なく、



あたし達はお互い離さず



ずっと抱きしめ合っていたら…



「ちょっと、アンタ達…いつまで抱き合っているのよ」



聞こえてきた声の方には…



「杞沙ちゃんっ!」



あたしの親友がいた。






…あれ?



いつからそこに?



「ずっと居たわよ。屋上でご飯食べる約束、してたでしょ?」



…ということは………



「全部見てた!?ってゆーか、なんであたしの考えてたことわかるの!?」



「ええ、全部。千波、全部声に出てるわよ」



ガーン…



しかも、全部声に出てるって…



あたしどんだけ…






「いいじゃーん、僕達の熱々抱擁!ご感想は?」



「…楓しね」



そう言って杞沙ちゃんは、



あたしから楓を引きはがして



あたしを抱きしめる。



「千波は、あたしのものよ」



杞沙ちゃん曰(いわ)く、あたし(千波)ラブだそうで…



毎日のように杞沙ちゃんに抱きしめられる。






「ずるーい!杞沙ちゃん、僕の千波返して!」



「い〜や〜よ!元々あたしのだったんだから!今も楓のだなんて信じてないわ!てか、許してない!」



「千波ちゃんはモノじゃないよぉ!それに、僕の可愛い可愛い彼女だもんっ!杞沙ちゃんに許可なんていらないよっ!!」



「なにをっ〜この、楓の馬鹿たれ」



「杞沙ちゃんのあほたん」



いつの間にか、杞沙ちゃんの抱擁も解かれ、



自由の身になっていたあたしを前に



二人は言い合いになっていた。






二人は犬猿の仲。



なんか、幼なじみなんだって……。



それにしたって…



ちらっと二人を見ると、



まだ言い争いをしてる。



「千波のどれだけ可愛いか少ししか一緒にいない楓に分かってたまるか!」



「千波ちゃんがどれだけ可愛いかなんて僕が1番分かってるに決まってる!」



さっきから、あたしを「可愛い可愛い」って…



「あたし、可愛くないからね?」



そう二人に告げると…