いきなり視界が真っ暗に。
その正体は…
「…千波」
楓に抱きしめられたから、だった。
………楓?
「心配した!教室に戻っても鞄しかなくて千波ちゃんいないんだもんっ!」
そっか、あたし……
楓の約束破ったんだっけ……
「……ごめん、楓」
「うん、許すよ……けど」
ん?…けど?
いきなり黙った楓を見ると一点を見つめる楓。
その先には徹くんがいた。
あっ、
徹くんがいたこと忘れてた!!
そういえば、彼、熱!!
「楓、はなして!徹くん熱あるの」
そう言っても楓はあたしをさらに強く抱きしめる。
ギロッ
千波は知らない。
楓はずっと徹の事を睨みつけていたことを。
「……はぁ…千波ちゃん、彼は彼氏かなんか?」
へっ?
いきなりの質問にびっくりするあたしと
フッと笑い
「そう、俺千波の彼氏。文句ある?」
そう言う楓。
少しため息をつく徹は
「はぁ、これが噂のナイトか…。…もう睨みつけるな。手はもう出さないから」
と、千波たちに言った。
「……そりゃ、どーも。だけど、今度また近づいてみろ?その時は覚えてろよ」
楓は千波の腰に腕を巻き、空き部屋へと入って行った。
委員会から戻ってきたらこのザマ…
ほんと天然彼女には安堵なんてものはない。
必死で探した結果、空き部屋の近くで見つけた千波。
一緒にいたのは、千波と同じクラスの男子だった。
俺は、千波を空き部屋の机に座らせた。
「楓?どうしたの?…徹くん、熱あるから「他の男の名前なんて呼ぶなっ」
……え?
「千波は、俺の彼女だろ」
俺はそう言って千波を抱き寄せた。
「え、急にどうしたの?楓、いつもと違」
ぎゅううっ
「いっ、た…」
俺は離れていかないように千波を強く抱きしめる。
いつからだろう……
こんな独占欲が強くなったのは……
いつからだろう……
こんなにも嫉妬深くなったのは……
「か、えで…っ、痛い…苦し、いよ」
パッ
と千波を放す。
「ごめん…」
俺は千波に呟く。
「どうしたの?こんなの、楓らしくないよ…」
俺………僕らしくない……
………そう、僕はこーゆうことしない。
忠犬みたいに
無邪気に千波ちゃんの側にいられれば…
でもね、もう限界なんだ。
僕ほんとに、千波ちゃんの彼氏なのかな?
ほんとに千波ちゃん、僕の事、男としてみてくれてる?
ほかの男と違う扱いしてくれる?
「…僕の気持ちわかってよっ!!」
「えっ…」
突然、怒り出す僕にびっくりする千波ちゃん。
男は狼なんだよ…
千波ちゃんは無防備すぎる。
僕だって、男だ。
耐えきれないよ…
他の男に触れられている千波ちゃんを見るなんて…
そっと千波ちゃんの手を持ち、
ちゅっ
手の甲にキスをおとす。
「っ!?」
驚いてる…
彼氏なのに男として見られてないなんて
僕、嫌なんだよ……
「もう他の男に千波ちゃんを触らせちゃだめだよ?」
そう言って僕は…
千波ちゃんのおでこ、
頬、手の甲、
最後に唇にキスを落とす。
「っ/////」
真っ赤になった千波ちゃんを見て
クスッと笑い、
千波ちゃんの手を引きその場を出た。
それからというもの、
休み時間がある度に、僕は
千波ちゃんの教室へと足を運んだ。