着いた先は、空き部屋。



暗くて少しホコリっぽい。



なんで徹くんはあたしをこんなところに連れてきたの?



疑問は増える。



すると、握られていた手を引っ張られた。



「わっ」



すとんっ



暖かい…



あたしが収まった先は



徹くんの腕の中…。



「わわっ、ありがと!…だいじょーぶだから、もう離してくれてもい「千波ちゃん、俺…千波ちゃんのこと好きなんだよ」


いいよって言おうとしたら



徹くんに遮られた。






すき…



そっかぁ!



「…友達としてすきだなんて、言ってくれてありがとう!あたしも徹くんのこと友達としてすきだよっ?」



「っ!」



目を見開いてびっくりしたような顔をする徹くんに



にこにこと笑顔のあたし。



うれしいな…



こんなにもあたしのことすきっていってくれる人…



不細工と嫌われてたあたしにとってかなり嬉しかった。



(過去も現在も千波は皆に嫌われてません)





「………そうか…だから、皆……」



そう呟いた徹くんは、



再び千波の手を握る。



「…へ?」



訳がわからず、千波は徹の手を握り返すと



「っ////ちょ、反則だよ、全く」




そう言って顔を赤らめる徹くんに



ますます訳がわからないと



首を傾げた。



徹くん、なんで赤くなってんだろう?



熱なのかな?



じゃあ、こんなところに居たらだめだよね!!



そう思ってあたしは、徹くんの手を引っ張る。







「えっ、どこいくの!」



「熱、あるんでしょ?早く帰った方がいいよっ!!」



あたしはそう言って教室まで徹くんの手を引っ張った。



「………千波ちゃん?」



後ろから聞こえたのは紛れも無いあたしの彼氏、楓の声だった。



「あ、楓!委員会終わったんだ?」



楓の元に駆け寄った。



「……誰?その男…」



「え、あぁ、徹くん!たちば」



ぐいっ



「えっ!?」








いきなり視界が真っ暗に。



その正体は…



「…千波」



楓に抱きしめられたから、だった。



………楓?



「心配した!教室に戻っても鞄しかなくて千波ちゃんいないんだもんっ!」



そっか、あたし……



楓の約束破ったんだっけ……



「……ごめん、楓」



「うん、許すよ……けど」



ん?…けど?






いきなり黙った楓を見ると一点を見つめる楓。



その先には徹くんがいた。



あっ、



徹くんがいたこと忘れてた!!



そういえば、彼、熱!!



「楓、はなして!徹くん熱あるの」



そう言っても楓はあたしをさらに強く抱きしめる。



ギロッ



千波は知らない。



楓はずっと徹の事を睨みつけていたことを。






「……はぁ…千波ちゃん、彼は彼氏かなんか?」



へっ?



いきなりの質問にびっくりするあたしと



フッと笑い



「そう、俺千波の彼氏。文句ある?」



そう言う楓。



少しため息をつく徹は



「はぁ、これが噂のナイトか…。…もう睨みつけるな。手はもう出さないから」



と、千波たちに言った。



「……そりゃ、どーも。だけど、今度また近づいてみろ?その時は覚えてろよ」



楓は千波の腰に腕を巻き、空き部屋へと入って行った。






委員会から戻ってきたらこのザマ…



ほんと天然彼女には安堵なんてものはない。



必死で探した結果、空き部屋の近くで見つけた千波。



一緒にいたのは、千波と同じクラスの男子だった。



俺は、千波を空き部屋の机に座らせた。



「楓?どうしたの?…徹くん、熱あるから「他の男の名前なんて呼ぶなっ」



……え?



「千波は、俺の彼女だろ」



俺はそう言って千波を抱き寄せた。









「え、急にどうしたの?楓、いつもと違」



ぎゅううっ



「いっ、た…」



俺は離れていかないように千波を強く抱きしめる。



いつからだろう……



こんな独占欲が強くなったのは……



いつからだろう……



こんなにも嫉妬深くなったのは……



「か、えで…っ、痛い…苦し、いよ」



パッ



と千波を放す。