「ずるーい!杞沙ちゃん、僕の千波返して!」
「い〜や〜よ!元々あたしのだったんだから!今も楓のだなんて信じてないわ!てか、許してない!」
「千波ちゃんはモノじゃないよぉ!それに、僕の可愛い可愛い彼女だもんっ!杞沙ちゃんに許可なんていらないよっ!!」
「なにをっ〜この、楓の馬鹿たれ」
「杞沙ちゃんのあほたん」
いつの間にか、杞沙ちゃんの抱擁も解かれ、
自由の身になっていたあたしを前に
二人は言い合いになっていた。
二人は犬猿の仲。
なんか、幼なじみなんだって……。
それにしたって…
ちらっと二人を見ると、
まだ言い争いをしてる。
「千波のどれだけ可愛いか少ししか一緒にいない楓に分かってたまるか!」
「千波ちゃんがどれだけ可愛いかなんて僕が1番分かってるに決まってる!」
さっきから、あたしを「可愛い可愛い」って…
「あたし、可愛くないからね?」
そう二人に告げると…
「「千波(ちゃん)は黙ってて!!可愛いんだよっ!!自覚して(よ)!!」」
二人とも見事にハモらせてあたしに言葉をぶつけた。
…………そう言われてもなぁ…
こんな地味で身長も低いこのあたしが可愛い?
ナイナイ!(無自覚)
二人とも目可笑しんじゃないかな?
眼科行った方がいいと思う。
だって、この前なんか、
目にゴミ入ったんだ……
それで涙が出た時に、
丁度クラスメイトに呼ばれたから
顔を上げたの。
そしたら、クラスメイト中の男子固まっちゃったよ?
それってあまりにもあたしの泣き顔が
不細工過ぎて固まっちゃったんでしょう?
すると、二人の喧嘩が止まる。
ぎゅううっ
「っひゃあ」
二人に抱きしめられた。
そして、
「なんてキザな子!」
「……だめだよ、他の男達にそんな顔見せたら…めっ!だからね」
とかなんとか言いながらぶつぶつと呟く二人。
えっ、な、なに?
「何の話?も~、なんのよぉ~!?」
無自覚な千波は二人の気持ちは永遠にわからないでしょう…。
あたしの親友の千波は…
一言でいうと可愛い!
それにちょこっと加えるならば、鈍感で無自覚…。
さっき、千波に凄い話を聞かされたけど…
あれほどとは……。
そりゃあ、クラスメイト中の男子…固まるわ。
千波は身長150センチという小さく、
その上かわいい。
その可愛い千波の目に涙が溜まってて
しかも150センチの身長…
声をかけたのが男子なら、身長は170センチくらいだろう。
え?何が言いたいかって?
上目遣いの千波に男子はノックアウトされたのだろう…。
可愛い可愛い千波の目には涙で上目遣い……
これはまさに誘惑という名の凶器よね。
だけど、千波は無自覚だし天然だし、鈍感だし…
ノックアウトさせられて固まった男子達をみて
自分の顔が不細工過ぎて固まったのだと思ったらしい。
それを聞いたとき
千波に聞こえない程度に
楓のやつと一緒にため息を付いた。
さすがと、言いますか…
なんと言いますか…
だから…なのね…。
先日からクラスメイトや他のクラスで
千波のことが好きなやつが増えてたのを耳にしたが…。
それはこーゆうことだったのか。
あたしは楓をみて思う。
コイツも千波狙いだったとは思わなかったけど…
はぁ~と少しため息をついたあたしは二人に目を向けた。
笑顔の千波がいて、その目に映ってるのは楓。