胃液がこみ上げていた。
血の匂い。
薬の匂い。
そして・・・死臭。
ロルフに支えられ、外に出ても、なかなか吐き気は収まらなかった。
ぐちゃぐちゃの顔のクラスメイト。
手のない後輩。
他にも、体中が真っ赤だったり、包帯でぐるぐる巻きにされていたり・・・
耐えられなかった。
「大丈夫か?気持ち悪いんなら、吐いていいぞ」
「ううん・・・平気・・・」
ロルフにしがみつきながら、私は吐き気が収まるのを待った。
怖い。
怖い。
怖い。
「怖いよぅ・・・」
「パトリシア・・・」
「怖いの・・・死にたくないの・・・」
まだやりたいことがたくさんある。
まだ生きたい。
もっと生きたい。
死にたくない。
生への渇望だけが、身体を巡っていた。
「きっと・・・みんな、そう思ってたんだよな・・・」
ぽつりとロルフが言った。
「みんな死にたくなくて・・・それでも、どうしようもなかったんだよな・・・」
「ひでぇなぁ・・・」
胸が痛い。
みんなに銃を向けたのは、間違いなく私の祖国。
友達を殺したのも、傷つけたのも、私の故郷の人々。
それは、残酷な、でも、まぎれもない真実で。
「ごめんね・・・」
「パトリシアが謝ることじゃない」
「でも・・・私の国が、あなたに銃を向けた」
「俺の国もいずれそうなるさ」
ロルフは、諦めきった目をしていた。
「遺体・・・回収しねぇとな・・・」
「え・・・?」
「校門の外に、まだ死んだ生徒がいるだろ」
何気なしに言っているが、それは・・・
「危ないよ・・・」