君の生きた証~love in war~

学生寮から火が上がっている。

そして、北の国境地帯には、アレンの故郷の国旗が掲げられていた。




「戦争・・ってことか・・・?」



国旗の下に備えられた大砲や兵士たちを見る限り、それ以外の選択はないだろう。
恐れていた事態がついに訪れた。


おそらく・・・アレンやパトリシアの国、ナタリーの国、そして俺の故郷の3カ国が戦うことになる。



それは・・・最も悲しむべき状況。
「悪い、エレノア、先に逃げててくれ」

「え、でも、逃げるって・・・」

「たぶん、校舎の中でいい」


さっきから怒鳴ってる先生たちの声がそう言ってる。





「俺、行かねぇと」
行かなければいけない場所がある。

守らなければいけない人がいる。




きっとその人は・・・今、登校している最中で。



いつも通り、友達と笑いあっているはずで。

毎日のように、軽やかに微笑んでいるはずで。
「分かった。気をつけてね」


エレノアがうなずく。

俺は、階段を駆け下りた。



エレノアと逢い引きしていた2階の廊下から、全速力で校庭まで走り抜ける。





きっと・・・いるはずなんだ・・・

神様・・・

どうか・・・




彼女が無事でありますように・・・
「ロルフ!」


名前を呼ばれて、そちらを見ると、ルームメイトが走っていた。

そりゃもう、死に物狂いの形相で。

なりふり構ってない。



アレンは、とても走るのが速い。

その達者な足で、体育大会ではいつも花形だ。

バスケで鍛えているはずの俺でも、ついていくのが精いっぱい。




だが、今は、髪の乱れとか、そういうことは頭から消して、ただひたすら走る。


アレンもきっと、目指す方向は同じだろう。



「まだ・・・学校来てないよな?」



誰のことかは、言わずもがなだ。




「そのはずだ」

「まずいことになってなきゃいいんだが」



唇をかむアレンに、自分が重なる。




同じ気持ちだ。

俺が抱えてる不安と同じ気持ちだ。
「あれ・・・ん、アレン、・・・アレンッ!」


甘やかな声が響いた。

わずかにかすれ、震えた声。



その声は、校舎の入り口からだった。



ほっと安堵する。





逃げていたのだ。


助かっていたのだ。





「なた・・・ナタリー・・・!」



アレンも、声を震わせる。



クールを気取って、いつも感情を気取らせないアレンが、ナタリーのこととなると、ひどく感情的になる。



あの小柄な少女は、それほどの大きな存在なのだ。
たちまち駆け寄り、アレンがナタリーを抱きしめる。

火で焦げたらしい綺麗な金髪を、愛おしそうになでさすった。




「ナタリー・・・よかった、生きてた・・・」

「アレ・・・ン、アレン・・・」



ナタリーも、アレンにしがみついて泣きじゃくる。