涙がこぼれた。
守り切れなかった。
愛し抜けなかった。
悔しい。
苦しい。
切ない。
悲しい。
言い尽くせない思いが、あふれ出てくる。
「・・・アレン」
同じく部屋を片付けていたロルフが、俺の横にしゃがみ込んだ。
「俺・・・俺、守れなかった・・・」
「アレン・・・」
「最っ底だ・・・最っ底の恋人だ・・・」
苦しい。
いっそこのまま死んでしまえたら。
父さんが憎い。
愛する人を奪ったあの人が憎い。
彼と同じ血が流れているこの身体すらおぞましい。
「もう、やめろ」
「ナタリーがお前に望んだのは、そんな生き方じゃない。そんなアレンじゃない」
ロルフが俺の目を見る。
綺麗なはしばみ色の目をしていた。
「援軍の兵士が言ってた。『敵軍のジョーンズ司令は、この国境から攻めることに最後まで反対したらしい』って」
「・・・え?」
父さんが・・・?
「兵法的に最も攻めやすいはずのこの国境侵攻に反対した理由って・・・やっぱりお前だろ?」
「・・・ロルフ」
「お前は・・・愛されてるよ、アレン。だから・・・生きろ」
生きろ、と、ロルフは繰り返した。
「生きて・・・お前の見た世界をこの世から消してやれ」
「この・・・世界を」
「あぁ、そうだ。誰も争わない世界が、きっと出来るはずだ」
生きようぜ、とロルフはつぶやいた。
「それが・・・俺たちの生まれてきた意味だろ?」
あぁ・・・そうだ。
生きなければ。
彼女のために。
誰もが幸福な世界のために。
たくさんの誰かに愛された俺は、この愛を未来へつなげなければならない。
そうだ。
そうなんだ。
そして・・・
誰かを幸福にしてやるんだ。
今まで誰もなしえなかった形で。
武力ではなく、愛で変えられる世界があるはずだ。
力でなく、言葉で築ける未来があるはずだ。
きっと、きっと。
そうだろう・・・?
ナタリー・・・?
遙か彼方の空で、懐かしい笑顔がうなずいた気がした。
fin.
終わりましたー!
よっしゃー!
マジ達成感!
ここまでよく書けたものだと我ながら感心してしまいます!
戦争という重いテーマに、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
この『Love in War』は、雪歩がいろいろな作品に触れ、『伝えたい』と信念を持って書いた初めての作品です。
今まで、他の作品を書くのも、もちろん私にとって大切な作業でした。
でも、こうやって自分の思いを物語にするのは、難しくて、けど、やっぱり大きな喜びのあるものでした。
かなり架空設定の多い作品です。
一応、第一次世界大戦中のヨーロッパをモデルとしています。
が、まぁ、たぶんこんなことなかっただろうな、と。
けど、『戦争』に多くを奪われた人の気持ちは描くことが出来たのではないかな、と思います。
戦争は、けして遠いものではありません。
そして、戦争の中で生きた人々は、今の私たちと同じ血の通った人間なのです。
同年代の人々を登場人物に設定し、恋愛を軸に描くことで、少しでもその温度感が伝わったらいいな、と思います。
で、ここでちょっと作者の思いを書いてみますと・・・
ナタリーの両親が亡くなっている設定をもっと細かく書きたかったんですが・・・展開上ボツに。
アレンは、教師になって、次の世代に平和の大切さを伝えていく設定です。帰国してからお父さんと、向き合うエピソードもあったんですけどね・・・。
パトリシアは、もうラストの方ぐだぐだでしたね。ごめんなさい。でも、無償の愛を体現してくれた素敵な女性だと思います。ありがとう。
ロルフも、若干ぐだぐだでしたね。おいおい、はっきりしろよ!・・・みたいな。ロルフがナタリーを好きっていう設定の伏線は、序盤でもけっこうありますので、もしよければ探してみてください♪
とにかく、ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
それでは、また違う作品で(^^)/
2014/03/28 17:28