私は、ロルフを愛した。
自分の全てを懸けて。
そのことを、うまく後悔できない。
彼を、うまく嫌いになれない。
悔しいけど、苦しいけど、一生背負っていきたいと思ってしまう。
消えてほしくないと、そう思ってしまう。
「ロル・・・フ・・・」
足が止まった場所にしゃがみ込み、顔を覆う。
ただ、ただ悲しい。
寒い。
体の芯まで冷えていく。
思わず、腕をさすった。
すると・・・
「・・・バ、カ野郎」
低い囁きとともに、ふわりとした感触が肩を包んだ。
「バカ野郎、寒いなら、寒いって言えよ」
低く息を切らせながら、ロルフが私の目を覗き込む。
「背負うなら、俺も一緒だよ」
「・・・・・・ロルフ」
どうして、の言葉が声にならない。
声にしたら、彼がいなくなってしまいそうで怖い。
あなたは私を愛していないのに?
あなたは私じゃない人を想っているのに?
どうして・・・
「・・・・・・そんな目で見るな」
ロルフがぎゅっとわたしを抱きしめる。
暖かく、穏やかなぬくもり。
「俺たちが重ねてきた愛は、嘘じゃないんだよ」
「嘘になるわけがないんだ。お前がこんなに本気になってくれたんなら・・・報いるすべは俺にしかない」
力強く抱きしめられる。
「正も誤もねぇよ。・・・これが俺の愛だ」
・・・信じてもいいのだろうか?
信じるべきなのだろうか・・・?
でも、理性が飛んでいく。
怖いくらい、彼に溺れていく。
裏切りも、嘘も偽りも、全て、本当はどうだっていい。
彼さえそばにいてくれるなら。
ようやく、息をできる気がした。
今度こそ、信じぬくと決めた。
この愛を貫いていこうと。
私は、体を包む優しいぬくもりに両手を回した。
「正も誤もねぇよ。・・・これが俺の愛だ」
そう。
友を裏切り、愛する人を傷つけ、恋人を踏みにじってなお、俺は、誰かを愛することにここまで貪欲なのだ。
パトリシアを捨てたくないと、そう思ってしまう。
愛されたいと、愛したいと、そう望んでしまう。
どれほど不実なことか、よく分かっているのに。
でも、この腕の中の少女は、守り抜きたい全てなのだ。
「話を・・・聞いてくれるか?」
誰にもずっと言えなかった話だ。
アレンも、ナタリーも知らない。
「俺の17年間の話だ」
ウィンスブルッグ家の長男として生を受け、育てられた。
下には2人の妹。
家を守ることは、自分が生まれた時から決まっていた運命だった。
跡取りとして恥ずかしくない生き方を強制された。
教育も、交友関係も。
そんな束縛から逃れようと、留学を決めた。
そして・・・彼女に出会った。
でも、彼女は選んではくれなかった。
「けど・・・君は」
この美しい瞳は。
「俺を愛してくれた」
甘えだとわかっている。
利己的な愛だと知っている。
それでも。
「パトリシアを守るために生きることは・・・もう許されないか?」