私たちは、運命の前でこんなにも無力だ。
それなら、私が彼を救う術は1つしかない。
「愛している」と告げることだけ。
アレンの存在を許すことだけ。
「私は・・・そばにいるわ」
ずっと、ずっと、永遠に。
ほのかな体温が制服越しに伝わってくる。
私は、静かな鼓動を感じながら、アレンを抱きしめた。
やわらかな髪が頬をくすぐる。
理性が吹っ飛びそうだ。
気弱になってるからって、男としての本能が消えてるわけじゃない。
ちょっとまずい・・・
しかも、横には備え付けのベッドがある。
あぁ・・・
疲れたとき、いつでも寝られる、なんて能天気なことを考えていた俺・・・
だめだ。
本気でおかしくなっちまう。
身体が密着して、劣情が刺激される。
慰めてくれてるのは分かる。
ナタリーの真っ直ぐな愛情もちゃんと分かる。
分かるから・・・
あぁ、くそ。
どうしようもない。
気弱になって甘えた俺がバカだ。
こんなことになるなら、格好つけてでも抱え込めばよかった。
「あの・・・ナタリー・・・」
「うん?」
死ぬ気で言ってみる。
「ちょっと・・・俺、限界・・・」
「え・・・?」
「ごめん・・・もう・・・」
扇情的なまでに美しい眼差しを向けられる。
あぁ・・・
神様・・・
「理性が・・・」
「あ、え、あ!・・・ごめんね・・・!」
ナタリーが焦る。
「そういうの意識したことなくて!」
「バカだなぁ」
思わず笑ってしまった。
「みんな夢中なのに」
「え・・・」
「自覚してる以上に、さ」
秀才なレミル。
お調子者のピーター。
人気者のチャールズ。
遊び人の悪名高いロバート。
無口なフィリップ。
奥手なジェームズ。
みんな口をそろえていった。
「素敵だ」と。