どこで道をたがえた?
どこで俺は間違った?
誰も答えてはくれない。
でも、過ちなら・・・正せはしないか?
繰り返すことなく、正すことは叶わないか?
もう、どうだっていい。
この本能のまま、俺は、脳裏に刻まれた笑顔をつかみたくて駆け出した。
私たちは、深い沈黙に包まれていた。
どういう言葉を発すればいいのか、私にもアレンにも分からなかったからだ。
「・・・寒いな」
「えぇ・・・」
「・・・屋根裏に行くか?」
アレンが私の傍らでそっとつぶやく。
「・・・うん」
屋根裏は、私たちの隠れ家だった。
付き合い始めた当初、人前でしゃべるのすら恥ずかしがった私のために、アレンが教えてくれた。
『テニス部の一番手にだけ引き継がれるんだ』
アレンはそう言った。
『じゃあ、ティムも知ってるの?』
『あいつはあいつでちゃんと持ってるさ』
アレンはいたずらっぽく笑った。
『昼休み、ロゼッティとティムの姿が見えないって、ヘレン先生が心配してるの知らないのか?』
「わ・・・久しぶりだね」
「そうだな・・・」
物陰の階段を上り、秘密の隠れ家に着いた。
最近は訪れることもなかったが、懐かしさに思わず頬が緩む。
まるで、戦争のことなど考えもしなかったあの頃のようだ。
「座れよ」
「うん?」
「長い話をするから・・・」
アレンがぽつんとそう言った。
私はアレンの言葉に従った。
「あまりうまく話せないかもしれないけど・・・聞いてほしい」
アレンは、ゆっくりゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「もうロルフから聞いて知ってるだろうけど・・・俺の父親は、軍の幹部だ」
「数年前、父さんが異国の民を討つための軍を編成した。
それは、たぶん、軍人として避けられない判断だったんだろうと思う。
実際、父さんは迷っていなかった。
でも、俺はもともと、銃を扱うのも、兵法を学ぶのも好きじゃなかった。
だから、受け入れられなかった」
俺は長男なのにね、とアレンは苦笑いした。
「軍の司令として、ヘンリー・ジョーンズの名前が新聞に出ても・・・」
「ヘンリー・・・」
「俺のミドルネームは父さんから受け継いだんだ・・・」
アレンが薄く笑う。
「俺は、ヘンリー先生が好きだったけど・・・父さんの影を探そうとしてたのかもな・・・」